インドネシアの投資環境~「雇用創出オムニバス法」で何が変わったか?~

投資環境を大きく改善し、外国投資の拡大と経済成長を目的に、2020年11月に施行された「雇用創出オムニバス法」。

日本インドネシア協会21年4月度月例講演会において、長島・大野・常松法律事務所の福井信雄氏に、この新しい法律の全体像をご解説頂きました。更に来る12月講演会では、その後の運用状況について、森・濱田松本法律事務所の竹内哲氏にご解説頂く予定です。

 

ここでは、基本的な観点から、同法施行による変更点に絞り説明したいと思います。

オムニバス法構造トリミング.jpg

「月刊インドネシア」2021年6月号福井先生講演録より引用

インドネシアでは法律や関連規程などを含め、投資実務のプロセスが分かりにくかったこともあり、今回の投資環境改善に向けた新法制定(投資法、会社法、労働法等80近い法律の一本化には内外から大きな期待が寄せられています。

 

しかしながら、一部ではまだ期待通りになっていないとの声もあります。原因の一つとして、‘法律’の下に、‘政令・大統領令・大臣令・省令等’付属の規程が存在し、それらが複雑に絡み合っている法体系の問題があると思います。

 

福井氏のご講演においては、今年3月の時点での施行細則51本として、’政令‘及び’大統領令‘に基づく関連規程をご説明頂きましたが、その下の’大臣令・省令・条例など‘に基づく施行細則は、32本の草案が公表されただけという状況でした。


その後、投資許認可を管轄する投資調整庁(BKPM)庁令等、省庁レベルの重要な関連規則がいくつも発表になりました。
( 12月度月例講演会は法律施行後1年経過となりますので、運用細則もすべて出そろい新法関連の全体像をご説明頂けると思います)

それでは、新法の前と後で何が変わったのでしょうか?


日本企業がインドネシアにおける事業投資を目的に、現地法人・駐在員事務所等を設立する場合、以下の点を検討するかと思います

 

(1)目的とする事業による事業分野ごとの規則

(外資100%(独資)でいけるのか、或いは合弁企業としてパートナーが必要となるのかという出資比率の条件など)

(2)各事業分野における許認可手続きの詳細

(3)税制優遇策なども含めたその他の留意事項

(1)については、

事業分野は、KBLIという5桁のコード番号で分類され、その番号ごとに各種の規定がありますが、外資の出資比率制限については大きく改善されました。

AFTER

「投資プライオリティリスト(大統領令2021年第10号・第49号)」

①出資比率など制限があるもの、及び内資だけに限定される37業種 ②内資の中小零細企業・協同組合のみに留保されているもの、及び彼らとのパートナーシップが必要になる106業種

③投資優遇措置の対象となる優先事業分野246業種に分類され、この3項目に該当しない事業分野は原則として外資100%の出資が認められました。

(③優先事業分野は優遇税制などのインセンティブを受けられる対象事業であり、その中にも外資100%の出資可能なものが含まれます。)

BEFORE

「投資法のネガティブリスト」

出資比率を含め外資の制限があるもの、ないもの、投資不可のもの、合計約500業種がまとめて表記。
 

外資100%に開放された分野が増加

(2)許認可手続きの進め方については、

BEFORE

OSS(Online Single Submission―事業許認可電子サービス)のオンライン
システムの中で、NIB(事業者番号)と事業許可(条件も含め)が自動的に発行されるものの、許可条件が実現するまで事業許可は下りませんでした。

AFTER

リスクベースの事業許可制度が導入され、KBLI分類コードごとに各事業のリスクを低・中(低)・中(高)・高の4段階に分けた上で、事業許可が必要とされるものは高リスクに分類される事業に限定されました。それ以外はNIBの取得及びスタンダード証明書だけで事業許可は不要に。

OSSのオンライン上で完結出来る事業分野も増加

(3)優遇策なども含めたその他の留意事項

税制優遇制度の内容に大きな変化はありません。

①タックスホリディ制度(前記優先事業分野の中から18分野を指定し一定期間法人事所得税を免除するもの)

②タックスアローワンス制度(同じく優先事業分野から183分野を対象に法人税の減免など)

③全国15か所の経済特区(SEZ)立地企業に対する各種優遇策など、従来通りですが、
 

BEFORE

案件の審査から優遇策の決定まで、経済担当調整省のもとで財務省を含め関連省庁が合同で行ってきたので、プロセスが煩雑で時間がかかりました。

AFTER

審査から決定まですべてBKPM(投資調整庁)だけで行い、それを上記OSSの中に組み込んだことから全体のプロセスが随分と短縮化され分かりやすくなりました。

優遇策などの実効性が抜群に改善

しかし、最低資本金の規定は、

BEFORE

最低投資額100億Rp(土地・建物除く)

最低払込資本金25億Rp

AFTER

最低投資額100億ルピア(変化なし)、

最低払込資本金100億ルピア(投資調整庁令2021年第4号)

原則として100億ルピアの払込み資本金が頭で求められます。

最後に労働法関連の規定としては、日本人職員の雇用許可が取りやすくなったことや、現地従業員の解雇が避けられない場合の手続きなどが大きく改善されました。これらは、従業員に有利過ぎるとして外国企業に不評だった労働法関連の改善として高く評価されますので、詳細については講演会の説明をご参照ください。
ただし、新しい規程に基づく就業規則や労使協定書は、今後締結されるものが対象であり、既存の協定書などは改めて労使が合意して改定せねばなりません。ご注意下さい。
 

​【参考資料】

インドネシア直接投資の現状と日本の立場2021年11月5日トリミング.jpg

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