インドネシアの投資環境 ー「雇用創出オムニバス法」の現状 ー 2022年1月

2020年11月に施行された「雇用創出オムニバス法」については、日本インドネシア協会・月例講演会の21年4月(長島・大野・常松法律事務所 福井信雄氏)及び12月(森・濱田松本法律事務所 竹内哲氏)の2回にわたり、その概要、問題点、今後の方向性など詳細にわたるご解説を頂きました。

前回のご案内では“「雇用創出オムニバス法」で何が変わったか?”として、4月の講演会までを参考に全体像をご説明しましたが、今回は12月の講演会も踏まえて整理してみます。

(1)    憲法裁判所による違憲判決(21年11月25日)


・2年以内(23年11月25日)に然るべき改正がなされない限り、雇用創出オムニバス法は法的に無効となる。インドネシア政府は必要な改正に入る構えであるが、これからの施行規則(運用細則)の制定は出来ない。


・既報通り、約80本の関連法を一括改正した同法(憲法裁はそのプロセス自体を違法としたが)の施行のあと、施行規則として(下位法令である)政令・大統領令51本に加え、(大臣令)・省令など32本の草案も公表され順次施行予定であったが、施行に至っていないものの取り扱いについては明確ではない。


・一方、51本の施行規則の中でも実務上大きな影響を持つ大統領令10号(業種別に出資比率などの詳細を規定するもの「投資プライオリティ・リスト」)が5月25日に一部改正され大統領令2021年第49号として施行されている。


・更に許認可手続きのシステムであるOSS(Online Single Submission-事業許認可電子サービス)で採用される「リスクベース許認可制度」について政令2021年第5号に加え、その細則となる投資調整庁(BKPM)規則2021年第3・4・5号が21年6月に施行され、同8月から新OSSシステムとして稼働している。

関連法令が連発され分かりにくいかと思いますが、現状としては(2年以内の)同法の改正を待ちながらも、既に施行規則として定められた51本の運用細則及びその一部改正となる大統領令2021年第49号と、新OSSの詳細を規定するBKPM規則第3・4・5号の理解が重要です。

(2)    投資事業分野の規定-大統領令2021年第49号(第10号を変更し5月25日に施行)


・条件付き投資事業分野(37業種)、中小零細企業留保事業分野(106業種)、優先事業分野(246業種)の概要は前回ご案内しました。(グランドファーザー条項、投資協定、経済特区、上場会社株式についての規定なども従来通りです。)
 

・優先事業分野という項目は本大統領令で初めて取り入れられた項目ですので、整理しますと、この246業種というのは、国家戦略上優先度の高い事業分野、資本・労働集約度が高い事業分野、ハイテク事業分野/イノベーション関連事業分野等と定義されており、各種の投資優遇措置を受けることが出来ます。


・この中には日本企業にとっても可能性の高い四輪自動車やEV関連事業、ハイテク関連事業なども含まれますが、その対象事業(前回ご案内したKBLI番号という分類コードごと)や製品、優遇措置の内容、必要となる条件などは本大統領令の別紙1に規定されています。(ここには掲載しません。)


・優先措置は、経済的インセンティブ(投資減税、法人税減免、輸入関税免除)と非経済的インセンティブ(ライセンス取得手続きの一部免除など緩和)の2種類です。
 

・外資規制が適用されない分野から、日本企業の関心が高いものを例示しますと、ディストリビューター、倉庫、陸上貨物運送、フレイトフォワーダー、病院、製薬、郵便、一部の製品を除く小売り、通信関連、広告、不動産仲介業などが外資100%の事業投資が可能になりました。(金融セクターは本令の対象外です。)

(3)    リスクベース許認可制度-政令2021年第5号及びBKPM規則同年第3・4・5号


・政令の細則となるBKPM規則が施行されましたので、前回のご案内を補足します。
 

 事業分野(KBLI番号)ごとのリスクレベルが定められ
    

 リスクレベル低:  NIB(事業識別番号)取得のみ
 リスクレベル中の低:NIB 取得 + Standard Certificate(自己申告)
 リスクレベル中の高:NIB 取得 + Standard Certificate(当局認証取得)
 リスクレベル高:  NIB 取得 + 所轄官庁が発行する許認可取得


 という分類です。(KBLI番号別のリスクレベルは政令5号別紙の参照必要です。)


・3本のBKPM規則では、それぞれの事業の詳細、投資優遇に関連する手続き、許認可監督などを定めていますが、更に重要なのは、第4号の中で外資の最低資本金額が従来の25億ルピアから100億ルピアに引き上げられたこと、最低投資額は従来の100億ルピアは不変ですが、業種が複数な場合はKBLI番号ごとに100億ルピアが必要と規定されています(但し、一部業種においては例外規定が存在します)。


・しかし、この制度もまだ完了していないようで、1,702あるKBLI番号のうち、1,359の番号しか反映されていないこと、一つの番号に複数の所轄官庁がある場合の対応など、個別に相談せねばならないものが残っているそうですからご注意下さい。

次回は、日系企業の皆さんからのお問い合わせも多い、ディストリビューターを例にとりその許認可プロセスの詳細をご紹介します。
 

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